丸谷彰氏(1945-)は、地域環境デザインを含む広い意味でのデザイン制作を手がけてきた研究者で、1970年に京都精華大学で教鞭をとって以降、2014年に退職して名誉教授となるまで、同大学を拠点にさまざまな活動にたずさわってこられました。そのうちもっとも長期にわたった活動のひとつとして、1974年から始まった滋賀県高島郡朽木村針畑(現 滋賀県高島市朽木)の生活文化についての調査と動画記録があります。この活動の主体となった針畑生活資料研究会は、丸谷氏を中心とし、京都精華大学美術学部(のちに芸術学部)の他の教員や学生たちも参加して運営されたゆるやかな団体です。
40年間にわたった記録のオリジナルフィルムやデジタル媒体は、民博の映像人類学を率いた大森康宏名誉教授の紹介を経て、2017年に民博に寄贈されました。同時に、製作過程が記録された履物や容器などの完成品、記録映画のシナリオ、上映会での配布資料なども、あわせて寄贈されました。映像資料は、映像メディアが発達する以前の生活のようすを記録したもので、学術的に高い価値をもっています。また、履物や容器なども、製作のようすが動画記録として残されているという意味で、さまざまなかたちで分析しうる研究資料になっています。