1977年に他界された土方久功(ひじかた ひさかつ)氏は、若い頃から世界の民族文化に関心を寄せ、東京美術学校で彫刻を学びました。氏は、その後1929年に、当時日本の委任統治領であったパラオ諸島に渡り、島々を巡りながら昔話や工芸作品の収集、民族調査などを進め、『パラオの神話伝説』『流木』などを著して民族学界から注目を集めました。氏はまた、パラオ芸術である「ア・バイ絵」の影響を受けた木彫制作を進めるとともにそれらを島民にも広めて新たな芸術運動を起こし、それがパラオ芸術の一つである「ストーリー・ボード」に展開したとも言われており、「日本のゴーギャン」と呼ばれたこともあります。
通算10年以上に及ぶパラオ滞在を含む1922年7月から1977年1月までの日記122冊、草稿やノート類などが、1986年、氏のご遺族から民博に寄贈されました。特に日記には、スケッチも含むパラオの詳細な調査記録が収められており、ミクロネシア研究者にとって極めて貴重な資料です。このたび、民博では土方久功アーカイブの目録を公開するとともに、劣化の進んでいる日記およびノートの全ページをデジタル画像化いたしました。
また、デジタル化した画像以外に日記の一部(1922~1942年)は『国立民族学博物館調査報告』において5分冊で刊行し、みんぱくリポジトリで公開しています。